怪物外国産馬誕生 グラスワンダー
今回の厳選名馬列伝は、グラスワンダーを振り返ってみようと思います。
グランプリレースになると強さを発揮したアメリカ産の怪物牡馬
父 シルバーホーク
母 Ameriflora
生涯成績:15戦9勝
主な勝ち鞍:朝日杯3歳S 有馬記念(2連覇) 宝塚記念
マルゼンスキーの再来?衝撃に強さ
グラスワンダーは、アメリカのセリ市で購入された馬で、外国産馬だった。
当時はまだ今ほどレースが開放されておらず、牡馬のクラシックには一切の出走は叶わない状況だった。
2歳の中山でデビューした。
主戦騎手は的場均騎手(現調教師)だった。
圧倒的な1番人気で、特に何もすることなく、まさに馬にまたがって1周回って来ただけで、勝利したかのような楽勝で初戦で快勝した。
2戦目は距離を短くして1400m戦だったが、全く関係ない競馬内容で、またして持ったままでの圧勝で一躍世代の主役へと登って言った。
3戦目には重賞の京成杯2歳Sへ挑むと単勝1.1倍の圧倒的人気に応えて6馬身差の圧勝を遂げる。
そして目標レースの朝日杯3歳S(現朝日杯フューチュリティS)に3連勝で挑んだ。
ここでも単勝は1.3倍の圧倒的人気だったが、このレースで初めてジョッキーがムチを使う競馬になった。
ハイペースで進んだ中団を追走していたグラスワンダーは、4コーナーで大外を回して進出すると坂でムチに応えてもう一伸びして、最後は2馬身差の勝利。
レコードタイムのおまけ付きで、誰もが怪物の誕生を確信した。
3歳になったグラスワンダーは、外国産馬のため皐月賞、ダービーには出走ができなかったため、当面の目標はNHKマイルCになった。
ニュージーランドTから始動予定だったが、調教中に骨折が判明して、前半戦を棒に振る運命にあった。
しかし程度は軽症で秋には復帰が可能だった。
ケガ後はまさかの連敗
秋は毎日王冠からの始動を選択した。
秋の天皇賞にも出走権はなかったが、距離的にもこなせるレーシングプログラム毎日王冠が最適だった。
このレースはとても注目を集めることになった。
それは、現役最強馬になっていたサイレンススズカの出走と、無敗の2歳チャンピオンの怪物グラスワンダーと、もう1頭の3歳外国産馬でこれまた無敗でNHKマイルCを制したエルコンドルパサーが出走したからだ。
エルコンドルパサーは、主戦騎手がグラスワンダーと同じ的場騎手だった。
的場は、グラスワンダーを選択して騎乗した。
2番人気のグラスワンダーは少頭数ながらサイレンススズカのハイラップに苦しめられた。
ちょうど真ん中あたりを追走して直線勝負に挑むが、サイレンススズカは遥か前方を走っていた。
そして同世代のライバルにも5馬身以上の差をつけられる屈辱的な敗戦だった。
復帰2戦目は、アルゼンチン共和国杯だった。
距離を一気に2500mに伸ばすことになったが、このハンデ戦でも1番人気に支持されるが、全盛期の走りには遠く及ばないもので、6着と惨敗した。
このあたりで、グラスワンダーは終わったなど囁かれはじめていた。
怪物がいきなりの復活、伝説再スタート
3歳の最終戦は、有馬記念になった。
人気投票で出走できた。
単勝人気は一気に落ちて4番人気だった。
このレースには、同世代の皐月賞と菊花賞を制したセイウンスカイや女傑エアグルーヴが出走していた。
レースでは中団の内側から進めて行った。
4コーナーでは、馬場の悪い内を避けて大外まわすと今までの敗戦が嘘のような走りで一気に前を捕らえて勝利を収めた。
古馬になり、大阪杯を目指すがアクシデントにより出走を断念することに。
実は脚元に不安があり、ケガを心配しながらの調教が続いていたグラスワンダーは、安田記念を目標に1400mの京王杯に挑んだ。
一気の距離短縮を物ともせずに、エアジハード以下を抑えて見事に勝利した。
安田記念では、直線で早め先頭に立つと大外からエアジハードに追い上げをくらい馬体を合わせての叩き合いになる。
一気に交わされるかと思われたが、並外れた勝負根性で盛り返すが、ハナ差で2着になってしまった。
前半戦の最終戦が宝塚記念になった。
ここでは2番人気になった。
1番人気は同世代のダービー馬のスペシャルウィークだった。
この年の春の天皇賞も制していて、まさに絶好調だった。
ライバルとの初対決になる。
レースではまさにマッチレースになった。
4コーナーでは、先頭に立っていたスペシャルウィークを2番手から直線で一気に差しきり3馬身離して宝塚記念を制して世代トップへ名乗りをあげた。
秋の初戦は昨年屈辱の敗戦をした毎日王冠だった。
今年はライバルがいなかったのもあり、ハナ差ながら勝利を収めた。
そして目標にしていたジャパンカップへ向かうはずだったが、またしても脚部不安が出て、出走を回避せざるえなかった。
そのまま有馬記念へ向かうことになった。
ここにはライバルのスペシャルウィークはこのレースが引退レースで、天皇賞(秋)、ジャパンカップと連勝して最高の状態で待ち受けていた。
そして、3歳馬の皐月賞馬で、ダービー3着、菊花賞2着の世代最強馬のテイエムオペラオーが出走していた。
レースは宝塚記念とは逆の展開で、グラスワンダーが前を走りそれをマークする形でスペシャルウィークが続いた。
直線では、外から先に抜け出したグラスワンダーを大外からスペシャルウィークと内からテイエムオペラーオーが襲い掛かる。
真ん中で苦しみながら伸びをみせて
わずか4cm差で叩き合いを制して有馬記念連覇を達成する。
この時は的場騎手は、負けていると思い直ぐに戻ってきたが、武豊騎手は勝ったと思いスペシャルウィークとウイニングランを行っていた。
騎手は数センチでも前に出ていればわかると言うが、名手達でも逆だと思ったほどの小差だった。
翌年はグラスワンダーの凱旋門賞挑戦のプランなどが持ち上がったが、歯車が噛み合わない年になった。
前年の有馬記念でも+12キロで出走していたにも関わらず、5歳初戦の日経賞も+18キロと体調管理がうまくいかない。
このレースを6着とまさかの敗戦で落とすと、続くレースでは一気に−20キロと絞ってきたが9着と精彩を欠く。
グランプリ4連覇がかかった宝塚記念でも、今までのようなレースは見せられず、6着に敗れる。
そしてこのレースで運命故障に見舞われ引退する事になった。
厳選名馬列伝が思うグラスワンダー
グラスワンダーは2歳戦であれだけの強さをみせたので、早熟馬だと思っていた。
事実3歳のケガ明けでは、強いところ見せられなかったので、間違い無いと思っていた。
そこからの復活にはビックリした。
今では考えられないローテーションで走っていたと思う。
あれだけの中距離で強さをみせたのなら1400mに出走させるのは今ではナンセンスのような気がする。
現役では、トーセンラーがマイル戦と3000m以上のレースで結果をだしているが、かなりのレアパターンだし、中距離でチャンピオンになれるような馬ではないのが、大きな違いだと思う。
グラスワンダーの5歳時には、担当厩務員が前年の有馬記念で退職しており、そこから馬体の管理が上手く行かなくなったと言われていたのを思い出す。
それが関係あったのかは分からないが、そう思われてしまうのもしょうがないのかもしれない。
一つだけ心残りなのは、全盛期のグラスワンダーにエルコンドルパサーやサイレンススズカとのリベンジマッチをさせてあげたかったということだ。
それにして、グラスワンダー、エルコンドルパサー、スペシャルウィークという馬が同年に生まれた奇跡と運命のいたずらで、3頭が同じレースで戦うことなく引退した珍しい巡り合せ。
3頭が一緒に走ったらどうだったのか、これもまた観てみたかった。
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